語るを聞く

【島根県海士町】みんな大好き!「あまコミュニティチャンネル」とは?

もとくら編集部が夜な夜な訪れた島のスナック「ルーマー」で、海士町の島民みんなが声を揃えて大好きだと語る、『あまコミュニティチャンネル(以下、あまチャンネル)』。島民の大多数が楽しみに観ている番組があるのか! それはもう編集部としては、どんな人が、どのような番組をつくっているのか、聞かずにはいられません。

そこで急遽『あまチャンネル』の番組を制作している合同会社隠岐アイランズ・メディアの山口 幸二(やまぐち こうじ)さんに、お話をうかがいました。

(アイキャッチ写真:隠岐の島町しげさパレードにて。写真中央:山口 幸二さん)

本土と島の人たちに向けたテレビ番組

── さっそくですが、『あまコミュニティチャンネル』(以下、あまチャンネル)ができた理由をおしえていただけますか。

山口 幸二(以下、山口) もともとは映像メディアによって地域の情報を都会へ発信するという、国の事業が始まりです。詳しく言うとそれは、『海士テレビ』というウェブサイトにアップロードした映像コンテンツを、ブラウザ上からの遠隔操作で、都会に設置したデジタルサイネージに映像コンテンツを配信できるシステムを構築した、国の委託を受けた事業です。

その事業で入手した機材や、培った映像制作のスキルをもとに、2011年に海士町全域に光ファイバー網『あま光ネット』が開設されたことがきっかけでケーブルテレビ『あまコミュニティチャンネル』は生まれました。

── どのようなことを意識して番組制作をしていますか?

山口 観光客の方にも観てもらえることを意識してつくっています。たとえば海士では島前神楽という神祭があります。海士町に来たからといって、すぐには見られる祭りではないし、他の土地にはないものです。でも、観光中に地域の文化や歴史を知れたら、旅がおもしろくなりますよね。

── 観光客はもちろん島民にとっても、地域への愛着が湧きそうですね。

本土島根県内でも絶賛放送中!月刊あまチャンネル

── 番組を見た島民の方からの声を聞くことはありますか。

山口 そもそも隠岐島には海士町しかケーブルテレビがなくてね。だから海士町の風景がテレビに写るだけで、島民は喜んでくれます。聞くところによると、役場の倉庫に保存されていたVHSや8ミリビデオの映像を基に制作した『映像ライブラリー』が一番人気ですね。「懐かしい」「既に亡くなっているおばあさんの若いころが見れて良かった」というような声を聞きます。

── 島の夜にお邪魔したスナックのママが「顔見知りがテレビに映っているから楽しい」とおっしゃっていたことを思い出します。他にはどのような番組がありますか?

山口 「週間あまニュース」という番組を制作し、毎回日曜日から一週間配信しています。毎日のニュースを生放送はできませんので、1週間分のニュースを15分~30分番組にまとめて放送します。それから「月刊あまチャンネル」という島の情報バラエティ番組も制作しています。隠岐の情報バラエティ番組として、海士町だけではなく隠岐4島の話題、観光スポット、伝統行事、神話、グルメ、ジオパーク(*1)、島民などを紹介しています。

(*1)ジオ(地球)に関わるさまざまな自然遺産、たとえば、地層・岩石・地形・火山・断層などを含む自然豊かな「公園」のこと。

── いやあ、拝見しました。本当におもしろかったです。

山口 「月刊あまチャンネル」は島根県内のほとんどのケーブルテレビ局で放送してもらっていて、1か月に20回ほどのヘビーローテーションで放送していただいている地域もあるみたいで、本土の方々からの、(海士町を含む)隠岐の島応援してあげよう!という気持ちを感じます。大変ありがたいですね。今後は機会などあれば、東京でも放送して、海士町や隠岐の島の魅力を伝えていきたいと思っています。

── 正直、こんなに楽しいテレビ番組が地域内で制作されているとは思わなかったです。私の好きなテレビ東京のようなイメージでした。

山口 ……テレビ東京、わたしも大好きです。

島のみんなが観たい番組を、みんなと一緒につくりたい

── ご高齢の方にとっては、『あまチャンネル』がいちばんの情報源になっているかもしれませんね。

山口 そうかもしれないですね。そうそう、いちばん嬉しかったことは「テレビは一日中、『あまチャンネル』しかつけていないよ」と言われた時。何回かあるんです。

── いい番組を制作したくなりますね。

山口 本土(島根県)のケーブルテレビの人が、「海士町の人はみんな仲良さそうですね」って言います。カメラ向けても、みんな仲良く喋っていて。やっぱり顔見知りですからね。島のみんなのおかげだと思います。

── これからはどんな番組制作を考えていますか?

山口 制作側が自己満足的に被写体を撮影して映像化するのではなくて、島のみんなを映して、出演者にしてしまう。要するに、みんなが観たい番組を、みんなが参加してつくっていけたらいいなって。

お話をうかがった人

山口 幸二(やまぐち こうじ)
1958年、兵庫県尼崎市生まれ。2005年、海士町に移住。
町内の民間企業で2年間事務をした後、海士町役場産業創出課の臨時職員となり、総務省の採択を受けた『地域ICT利活用モデル構築事業』で、映像配信による都市部との交流を目的とする実証実験に携わる。そのときに自己流で映像制作のスキルを身に付ける。2012年、あまコミュニティチャンネルの開設と同時に、その番組制作に携わる。2015年4月、あまコミュニティチャンネルの番組制作と、その他ビジュアルコンテンツを制作する『合同会社隠岐アイランズ・メディア』を設立。

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小松﨑拓郎

ドイツ・ベルリン在住の編集者。茨城県龍ケ崎市出身、→ さらに詳しく見る

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