営みを知る

【蔵前】「KONCENT(コンセント)」をエネルギー源に、どこの真似もしない町を作る

モノづくりの町【蔵前】特集、始めます。

「コンセントって何語だか知ってる? 英語みたいだけど、実は日本語なんだ。和製英語ってやつだね。なんだか僕らっぽいでしょ? それにすごく蔵前っぽくもあるね」

そう笑顔で語るのは、蔵前にあるデザインプロダクトショップ「KONCENT(コンセント)」のオーナーであり、「KONCENT」を運営するアッシュコンセプトの代表・名児耶秀美(なごや ひでよし)さんです。

蔵前の町で、モノではないものを売る

「KONCENT(コンセント)」の名児耶秀美さん

名児耶さんは2002年にオリジナルブランド「+d(プラスディー)」を立ち上げ、動物の形の輪ゴム「Animal Rubber Band(アニマルラバーバンド)」や濡れた面が内側になる傘「UnBRELLA(アンブレラ)」など、個性的なデザインプロダクトを数多く生み出してきました。

これらのアイテムを自分たちで売る場所が欲しい──そう思った名児耶さんは、2012年、「KONCENT」を蔵前の地に出店します。

── なぜ出店先に蔵前を選んだのでしょう? 青山とか表参道とか、最先端でおしゃれなエリアにあるようなショップなので、不思議だなあって思って。

名児耶 僕自身がこの辺の出身でね。小さいころは浅草寺幼稚園に通っていたよ。蔵前には昔「蔵前国技館」っていうのがあって、よく場外のチケットを買っては立ち見をしてたね。だから、地元だっていう理由ももちろんあるし……あとは、あれだね。青山とかはかっこいいんだけど、「おいしいランチ食べられるあのお店にまた行こう」って思って行くと、なくなったりしてない?

── ありますね、そういうこと。移り変わりが激しいというか……。

名児耶 そうなんだよ。でも蔵前近辺は、それこそ僕が幼稚園の頃から行ってるお蕎麦屋さんが今でもあって、そこに行くと働いてるおばさんたちがいて。「悪いけど僕のほうが古いからね」とか言ったりなんかして(笑)。

── あはは(笑)。

名児耶 なんていうかなあ、すごく昔からのものがあって、しかも人と人とのつながりがある町だよね、この辺りって。

お店に来た人に「なぜこれを作ったのか」とか、「これの良さはここ」とか、きちんと伝えながら販売したいと思ったんだよ。商品だけじゃなく、その周りのストーリーやデザイナーの気持ちみたいな、モノを超えたものを買って欲しいと思ったんだ。

── そうした届け方をするには、この町がぴったりだったんですね。

名児耶 そうそう。それに、蔵前の人間同士もつながってて、仲がいい。お店同士もいいなと思ったことやおもしろいことをどんどん共有して、町自体を面白くしていってる。慣れ合いじゃなくて、お互いをリスペクトし合いながらね。

今、うちでコーヒーを出してくれている「SOL’S COFFEE」だって、「結わえる」でスタッフとランチをしたあとに「SOL’S COFFEE」に連れて行ってもらったとき、アイスアメリカーノの美味さに惚れちゃって。口説いて口説いて、こうしてうちのお店でコーヒー出してもらえるようになったし……。

「デイリーズ・マフィン」の古家さんはKONCENTのイベントに呼んだら「蔵前の町にどうしても出店したくなった」って言って仙台から出てきたし……あ、「デイリーズ・マフィン」って知ってる?

── 知らないです!

名児耶 じゃあこの後、連れて行ってあげよう。あそこのマフィンを食べて、僕は苦手だったマフィンが好きになった。あとは「カキモリ」の広瀬さんもおもしろいひとだね。みんなつながっているし、この町でなにかをしたいと思っている。この蔵前の町が好きだから。

蔵前の「玄関口」であり「コンセント」に

KONCENT外観

── 名児耶さんも、すごく蔵前がお好きそうです。そんな蔵前の町の中で、「KONCENT」さんはどんな存在でいたいですか。

名児耶 「蔵前」の玄関口でありたいね。都営浅草線A3番出口(*1)を出たらバンッて真正面にうちがある。そこでコンシェルジュみたいに、蔵前やお店のことを教えてあげたいね。ここだけじゃなくいろんなところを回ってみてって。「情報発信基地」みたいな感じかな。蔵前の他の店や蔵前自体の良さを発信できる場所でありたい。だから蔵前の地図やフリーの小冊子なんかも作って配っているよ。

(*1)2015年4月29日現在、都営浅草線「蔵前」A3番出口は一時閉鎖中です

── 今後、蔵前はどうなっていくでしょうか。

名児耶 たぶんあまり変わらないね(笑)。さっきも話したけれど、それが蔵前の良さ。お願いだから家賃も高くならないで欲しい。お金はないけれど若くて元気な連中が、集まれなくなっちゃうからね。僕たちはここを銀座のブランドストリートみたいにしたいわけじゃないから。蔵前は、蔵前にしたい。どこかの真似をするんじゃなくて、蔵前は「オリジナル蔵前」でいたいんだ。

そして、そんなオリジナル蔵前をみんなで作っていく上で、僕らは本当に「コンセント」みたいな存在でいたい。プラグを差し込むと電気を供給してくれるコンセントみたいに、関わってくれる人たち、つながった人たちが、僕たちからエネルギーをたくさんもらって元気になってくれたらいいなって。

さあさあ、話はこれくらいにして、早く「デイリーズ・マフィン」に行こう。

お話をうかがった人

名児耶 秀美(なごや ひでよし)
1958年、東京都生まれ。武蔵野美術大学造形学部卒業。2002年「アッシュコンセプト」を設立し、オリジナルブランド「+d」を生み出す。企業や産地とのデザインコンサルも多数。2012年、蔵前の地に「KONCENT」をオープン。武蔵野美術大客員教授も務める。

お店の情報

KONCENT Kuramae
住所:東京都台東区蔵前2-4-5 1F
電話番号:03-3862-6018
営業時間:11:00-19:00
定休日:不定休
アクセス:都営浅草線 蔵前駅 A1・A3出口から徒歩1分
公式HP:KONCENT公式サイト

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探求者

福島 槙子

1986年生まれのフリーライター・編集者。文具のある生活を提案する「文具プランナー」としても活動中。Webサイト 「毎日、文房具。」で文具の情報を発信するほか、女性文具ユニット「文具lady.」としてメディアやイベントに出演している。

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【蔵前】「MAITO/真糸」の草木染め体験がたのしかった。季節の色で染めるスカーフをつくれます 【蔵前】NAOTの靴を履いて遠く遠く、どこまでも|株式会社loop&loop代表・宮川 敦

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