台東区蔵前にある「CAMERA」は、革製品の「numeri」と焼き菓子のブランド「MIWAKO BAKE」が作るカフェです。店名には「目的の異なるさまざまな人が集い、楽しめる”部屋”になってほしい」という想いが込められています。

夫婦のやりたいことを掛け算した結果、誕生したという「CAMERA」。どのような経緯でお店を始めることになったのか、店主の田村美和子さんと、革職人の田村晃輔さんにお話をうかがいました。

蔵前にあるcamera

焼き菓子が元気をくれたから

焼き菓子「MIWAKO BAKE」

── お店に入った途端から、焼き菓子のいい匂いがします。まずは「MIWAKO BAKE」がオープンする経緯を教えていただけますか。

田村美和子(以下、美和子) あるカフェで焼き菓子を食べたら、元気になったことがあります。一口食べて、心の内から力が湧きあがる感じがしたんですよ、不思議なことに。

── どんな焼き菓子だったんですか?

美和子 厚みのある、ショートブレッド。ほろほろっとした食感が忘れられなくて「CAMERA」でも厚みのあるクッキーをよく作ります。

camera・田村美和子さん

── なるほど。どうして焼き菓子を食べただけで、それほどエネルギーを感じたのでしょうか。

美和子 その理由は、7年勤めていた前職ですごく忙しくて、自分に余裕がなかった時期だったからだと思います。もともとは外資系メーカーの販売店に勤めていました。自社製品の成り立ちを知らないまま販売するのは、恥ずかしいと思うようになって、実家が営む革製品メーカーに入社させてもらったんです。7年かけて企画からお客様とのやりとり、材料選びに発注と納品まで、一通りすべての工程を学ばせてもらいました。

それでも当時の仕事は「自分がやりたいことの最終地点ではない」と直感していました。だからといって「何がしたいのか」と聞かれるとわからず、ずっとモヤモヤしている状態。自分が進むべき次のステップを探していたときに、友人と訪れたカフェで焼き菓子を食べて、とても癒されたんです。

焼き菓子「MIWAKO BAKE」
「キャロットケーキ」はシナモンとジンジャーを中心に6種類のスパイスをミックス。生地のまろやかさと、レモンをホイップしたクリームチーズの爽やかな味わいが合う。生地に厚みをもたせた「お花のクッキー」は、素朴な味わい。いちごジャムの酸味がいいアクセントに。

美和子 それからも仕事は続けていたんですけど、突然、辞めようと思い立ちました。同時に「焼き菓子を作ってみよう」という考えが浮かんできて。調理製菓専門学校に通いながら、カフェで働くことにしました。結果的にはたまたま知り合って結婚することになった主人が、革のモノづくりに携わっていて、一緒にお店を始めることになりました。

camera・田村晃輔さん

田村晃輔(以下、晃輔) ぼくは昔から、自分のブランドの商品を売れるカフェを開くのが夢でした。だから彼女と知り合ったときに、「焼き菓子のお店を作りたい」という彼女と考えが合致して、すごくスムーズな流れでお店ができました。ぼくひとりではきっと実現できなかったことだと思います。

目的はいらない、人が集う部屋

camera内観

── 「CAMERA」がオープンしてから、約1年が経ちましたね。

晃輔 ぼくの誕生日だからということでオープンのために急ピッチで準備していただいて、2014年の10月10日にプレオープンしました。

── 最初に思い描いた構想に、近づけていますか?

美和子 「CAMERA」のコンセプトは「いろんな目的のある場所にしよう」です。イメージはカフェというより、コミュニティが生まれる場を作ること。みんなが集まる場所は、来てくれるお客様が中心になって創るものですから。今は地元の方同士だけではなく、遠方から来た方との出会いや交流が、ここでたくさん生まれているんですよ。

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晃輔 カフェなのにふたつのコンセプトがあったら、おもしろいですよね。

美和子 このお店に来て、カフェだけで利用する人もいるし、革バッグや雑貨が見たいというお客様もいます。お店に来てくれる理由はどちらだけでもいいんです。むしろ「CAMERA」に来る目的がなくても、カフェでゆっくりくつろいでもらいながら、ひとやモノとの出会いのきっかけになることもありますから。

蔵前は“みんなでがんばれる町”

── 「CAMERA」が今後やりたいことはありますか?

美和子 お客様に体験してもらえるような活動を広げていきたいです。たとえばお菓子づくりや革小物を制作するワークショップ、レクチャー教室とか。革に関する資料を置いてもいいですね。

── これだけスペースがあると、できることはたくさんありそうです。

美和子 この空間を活かして地域にも還元していきたいです。蔵前には、モノづくりをしている方々がたくさんいるので、ギャラリーとして作品を飾ることもできそうね。キッチンではフードイベントができる。このあいだはフードコーディネーターの方に来ていただいて、お客様にランチを振る舞いました。キッチンに立つのは、私だけじゃありませんよ。いろんな方をご紹介できる機会を増やせるといいなあ。

cameraの革製品ブランド「numeri」

── 蔵前の魅力は、どのようなところだと思いますか?

晃輔 人が人を呼んで集まる人のよさだと思います。浅草と浅草橋の間にある蔵前は、知っている人とそうでない人がいるぐらいのマイナーな場所だと思うんです。

それでもぼくたちは「蔵前がいい」と思って、この地域に来ることを決めました。いま蔵前にいる人たちも、「いい人たちが集まっているから」という感覚を持って、ここで暮らしているのではないか、とぼくは思っています。商売をスタートさせるにあたって、場所はものすごく重要ですし、人も大切です。仕事はひとりではできないから。蔵前は、みんなで「がんばっていこう」ができる地域だと思うんです。

── さいごに、お店を続ける上での想いを聞かせてください。

美和子 オープンしてからまだ1年なので、お店に立つ想いは変わりません。誰でもふらりと立ち寄れて、ほっと一息つける場所でありたい。コーヒーとともに焼き菓子を食べて、元気になってくれたらいいな。

晃輔 そうだね。そして「CAMERA」が3年、5年、10年とこれからもずっと継続できるように、地域に密着して、蔵前に馴染むお店ができたら嬉しいです。

お話をうかがったひと

camera・田村美和子さん

田村 美和子(たむら みわこ)
東京都台東区出身。アパレル企業に勤務した後、ものづくりを勉強したいと実家業の革製品のメーカーに転職。企画から納品まで、生産以外の業務を7年経験。後、お菓子が人を元気にするということを身をもって体験し、お菓子作りに目覚める。短期の製菓専門学校カリキュラム修了し、「MIWAKO BAKE」を屋号に活動をスタートさせた。

cameraの田村晃輔さん

田村 晃輔(たむら こうすけ)
兵庫県たつの市出身。スポーツ選手として学生生活を過ごした後、興味のあったものづくりへの道を歩むため革製品のメーカーに就職して5年間修行。その後独立し「DIECI-LABO」を設立。若い職人を育てながらさまざまな革製品を作り出している。2014年春よりオリジナルブランド「numeri」をスタート。

このお店のこと

CAMERA
住所:東京都台東区蔵前4丁目21-8 岡松ビル1
営業時間:11:00〜18:00
定休日:月曜日
電話:03-5825-4170
公式サイトはこちら

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