営みを知る

【蔵前】「NAKAMURA TEA LIFE STORE」100年先も、暮らしにお茶の楽しみを。

モノづくりの町【蔵前】特集、始めます。

都営大江戸線、都営浅草線の蔵前駅から徒歩数分、穏やかな町の中を進むと見えてくる、赤いレンガ作りの建物。こだわりの商品「GARDEN NO.02」のパッケージと同じ紺色ののれんが、建物と町並みにすっと馴染んで、おしゃれ。

NAKAMURA TEA LIFE STOREの外観

2019年に創業100周年を迎える、静岡県藤枝市のお茶農家「中村家」のご主人が大切に作る、「カラダに優しく、いつまでも安心して飲めるお茶」を東京都内で売るお店が、こちらの「NAKAMURA TEA LIFE STORE(ナカムラ ティー ライフ ストア)」です。

暮らしが便利になると共に薄れてきた、急須でお茶を飲むという文化を広めたい。そして、次に来る100年も若者にお茶を楽しみ続けてほしい―。そう願うひとたちが作るお店に、少しおじゃましてみましょう。

NAKAMURA TEA LIFE STORE

無農薬有機栽培にこだわる「NAKAMURA TEA LIFE STORE」のお茶の魅力

「中村家」とは、静岡県藤枝市で約100年の歴史を誇る老舗のお茶屋問屋です。2007年に急逝してしまった先代の中村秀雄さんに代わり、今は中村倫男さんが当主として、静岡県でお茶を栽培しています。

「NAKAMURA TEA LIFE STORE」は、「中村家」のご主人と、同級生である西形圭吾(以下、西形)さんが運営するデザイン会社「Inc.1981 LLC」がタッグを組んで、2013年に新しく作ったブランドのこと。はじめはウェブ上での通販のみの販売でしたが、口コミやイベントなどで徐々に人気が拡がり、2015年1月に、蔵前の地にお店を構えるに至りました。

「NAKAMURA TEA LIFE STORE」で売っているお茶は、すべて無農薬有機栽培で作られた、オーガニックのお茶。今から30年ほど前に、先代が農薬で体を壊してしまい、そのことが農法を切り替えるきっかけになったのだとか。

お茶は、一般的には複数の茶葉をブレンドして作られることが多いそうですが、こちらのお店で扱うお茶は、ブレンドしていないものがメイン。それぞれの茶園で穫れたお茶の個性を活かすため、商品は茶園ごとに別々に製造しています。

NAKAMURA TEA LIFE STORE

商品を見てみると、それぞれに「GAEDEN NO.01」「GARDEN NO.02」など、茶園の名前を冠したラベルが付いているのが分かります。

NAKAMURA TEA LIFE STORE NAKAMURA TEA LIFE STORE

また、すべての商品に茶葉の収穫日、収穫場所、栽培担当者、栽培方法が記載された品質保証書が付いています。「NAKAMURA TEA LIFE STORE」の茶葉は、いつ、誰が、どこで作ったのかがすぐ分かる仕組みになっているのです。

お店の外観も、パッケージも、茶葉の栽培方法も、これまでの「お茶」のイメージとは少し違っている様子。なぜこういった発信の方法をしているのか、理由をお店の運営者兼デザイナーの西形さんに聞いてみました。

NAKAMURA TEA LIFE STORE
「NAKAMURA TEA LIFE STORE」の西形さん。暖簾をくぐると、茶香炉の良い香りが迎えてくれる。

幼い頃から親しんできたお茶の魅力を伝えたい

── 「NAKAMURA TEA LIFE STORE」の立ち上げの経緯について教えてください。

西形 このお店は老舗お茶農家の当主の中村くんと、同級生の僕とで一緒に立ち上げたお店です。中村くんは、一度上京したあと稼業を継ぐために静岡に帰り、僕は静岡で就職した後、東京都内で起業して、デザイン会社を経営していました。お互いに進む道は別々だったけれど、昔からいつか一緒に何かをやりたいね、と言い合っていたので、それが実現した形が、このお店になります。

── お店を出店するのは昔からの夢だったのでしょうか?

西形 いや、そんなこともないですね。ウェブで商品を売り始めたのが2013年頃。オーガニックのお茶を取り扱っているので、オーガニック系のイベントに出店したり、「バーニングジャパン」というイベントでお茶のブースを出したり。ウェブ以外の場所でお客様との接点を持つ機会が多くなってきたので、自然と「じゃあお店を出そうか」となりました。

── 蔵前を選んだ理由はありますか?

西形 いや……じつは、全然(笑)。僕は世田谷区在住だったので、東京の東側にもともと土地勘がなくて。月に一度ほど、オーダーしている缶屋さんに通うために浅草近くのかっぱ橋道具街に足を運んだり、おもしろい茶器を探しに問屋街を歩いたり、という程度で、それも新鮮で楽しいなぁという感じでした。

kuramae
(画像:モノづくりの町【蔵前】特集、始めます|灯台もと暮らし より引用)

西形 でも、お店を構えるとなった時に、モノづくりの文化が根付いているこの辺りがとても魅力的だとなんとなく思って。蔵前が最近賑わっているらしいよと友達に聞いて、じゃあ見に行こう、となって偶然見つけたのがこの物件でした。

── そうなんですね。

西形 今は蔵前、大好きですね。いい町です。東京の西側、例えば表参道や原宿などと違って、通りすがりに偶然お店に入ってくださるというケースは少ないけれど、その分このお店を目指してやって来てくださるお客様も多いですし、そういった方とはお茶の話が存分にできます。最近だと、女性のお客様や、贈り物用にと買い求めていただく方も多いですね。

── なるほど。お店の立ち上げに込めた想いですが、やはりより多くの方にお茶の魅力を知ってほしいということがメインなのでしょうか?

西形 そうですね。若い世代にもっとお茶に親しんでほしいという気持ちが一番です。パッケージやサイトのビジュアルも、商品を作った当初はまだお店がなかったので、若い世代の方に好んでもらえるようなものを、と意識しました。

NAKAMURA TEA LIFE STORE

── 最近は、お茶を飲むと言えばペットボトルが主流になっている気がします。

西形 静岡県出身の人なら理解しやすいと思うのですが、僕たちにとっては、急須でお茶を飲むということは、空気のように自然な行為なんです。それこそ、水を飲むようにお茶を飲んでいて……。だから、18歳の時に静岡県を出て一人暮らしをする時も、当然のように急須を荷物に入れました。

でも、県外の友達が家に来た時などにお茶をふるまうと、「へぇ」とか「急須でお茶を飲むんだね」と言われる。僕はそれが当たり前だと思っていたので、驚いたというか、新鮮な気持ちになったというか。「あぁ、みんなにとっては普通じゃないんだ」と気が付くことができました。

そんなことが、今日本の随所で起こっているんだろうなぁと思っていて。お茶を急須で淹れるという文化が薄れるということは、お茶の売れ行き自体にも影響します。じつは、「中村家」は2019年で創業100周年を迎える予定なのですが、このままでは、次の100年を乗り越えることは難しいんじゃないかという想いもあって、このお店を立ち上げました。

NAKAMURA TEA LIFE STORE_

── なるほど。急須で淹れるお茶の魅力を伝えると共に、お茶を飲む文化そのものも、もっと広めていきたいと。

西形 それが結果的に、お茶屋の未来につながっていってくれたらいいなと思っています。2019年に向けて、新しい茶木を静岡県藤枝市に植える計画も立てているんですよ。新鮮でおいしいお茶を収穫できる茶木の寿命は、植えてから30年が目安と言われています。新しい茶木を植えるというのは、お茶屋にとってひとつ大きな出来事で。

── 次の100年の新しい幕開けになりそうですね。

西形 なってくれたら、いいですねぇ。最近、自宅でコーヒーを淹れる人って、増えているじゃないですか。ライフスタイルの1つというか、以前よりもコーヒーという飲み物が、自然な形で暮らしに浸透し始めている気がします。それと同じように、こだわりのお茶を自宅で飲む人が増えたり、楽しんでくれる人がもっと増えてくれたらいいなと思っています。

お茶って、茶器が、とか温度管理が、とか、もしかしたら難しいイメージがあるかもしれないのですが、そんなことよりも、とにかくおいしくお茶を飲んでほしい(笑)。お茶について知りたくなったら、いつでも僕、教えますし。って僕も本を読んで勉強したりしてるんですけど。このお店が、その興味を持つきっかけになってくれたらいいですね。

NAKAMURA TEA LIFE STORE
西形さんの愛読書「日本茶文化大全

── 「NAKAMURA TEA LIFE STORE」さんのお茶はとてもおいしくて、良い香りがします。たしかにお茶は身近なようで、身近になりきれていない存在なのかもしれません。このお店に来て、お茶に興味が湧きました。また、いろいろと教えてください。

西形 ぜひぜひ。お茶、また飲みに来てくださいね。蔵前にはほかにも素敵なお店がたくさんあるので、町歩きも楽しみつつ。

NAKAMURA TEA LIFE STORE

お話を伺ったひと

西形 圭吾(にしかた けいご)
静岡県藤枝市出身。デザイン会社や映像編集スタジオ勤務を経て
2012年にInc.1981LLCを設立。デザインや映像制作業務と並行して
2013年よりオーガニック日本茶ブランドNAKAMURAの運営を開始。

このお店のこと

住所:東京都台東区蔵前4丁目20-4
アクセス:東京メトロ大江戸線蔵前駅から徒歩約4分。
電話:03-5843-8744
営業時間:火曜〜日曜日 12:00-19:00
定休日:月曜日
公式サイトはこちら

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探求者

伊佐 知美

旅するエッセイスト、フォトグラファー。1986年生まれ、新潟県出身。世界中を旅しながら取材・執筆・撮影をしています。→ さらに詳しく見る

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