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【北海道下川町】地域の小売の鍵は“専門性”にアリ!「寿フードセンター」の未来をつくる担い手求む

一人ひとりが歴史を紡ぐ風を生む【北海道下川町】特集、暮らしながら始めます。

地域に根付いた商店は、おそらく全国各地にあります。チェーン店にはできないビジネスの形を、日夜追求している日本中のご当地スーパー。ふだん使うものから地域で採れたものまで、特徴や強みは様々です。

北海道下川町に暮らしているわたし(灯台もと暮らし編集部・立花)も、極力地元のスーパーでものを買おうと思っています。営業時間や品揃えで、どうしても他店に行かなければならないこともありますが、ここにしかないスーパーだからこそ、できることがあるはずなのです。

創業80年以上を誇る、町の台所

国道に面した下川町のメインストリートには、2つのスーパーがあります。一つは西條という北海道内の大手チェーン店が運営する「Qマート」。そしてその隣にあるのが「寿フードセンター」です。

寿フードセンター

町のひとからは、“寿”の愛称で親しまれている店で、店頭での販売はもちろん、市街地から離れた一の橋集落への移動販売車に商品を提供したり、地域のイベントごとのお惣菜・お弁当の提供などを一手に引き受けたりしています。

寿フードセンター

創業時はお菓子屋さんでしたが、現在の寿の夏野俊一社長が、スーパーとして経営の舵を切りました。スーパーとして再始動した1954年以降、町の台所を支え続けてきた「寿フードセンター」。

地域の商店・小売業が息長く続いていく秘訣は、一体どこにあるのか。夏野社長の思いを聞きました。

(以下、夏野俊一)

地域商店の本音

寿フードセンター

下川町に限らず、これからいろんな地域で人手が不足していきます。いや、もうすでに足りていませんね。若者の数が減って、購買数も下がっていく。だから、今までと同じことをずっと繰り返していても、小売業の未来はありません。

必要なものは、コンビニと大手、それからインターネット販売があれば足りる世の中です。小売業界で我々程度のものは、なくても生活者は困らない。でも、今まで受け継がれてきた店は、たくさんありますよね。そういうところのほとんどは、後継者がいなくて必死に探しているんです。

一昔前なら、店を継ぐのは家族でした。でも今は、子どもたちは都会に出たり違う仕事に就いたりして、事業承継がうまくいっていないところが多い。だから他所からやる気のあるひとに、来てほしいなって思うんだよね。

これからの小売に必要なのは、専門性

僕が過去50年、この店をやってきた中で、失敗も成功もいくつあるか数え切れないくらい、いろんなことがありました。家が全部焼けて、バケツ一個しか残らなかったところからスタートした時代もある。そういう紆余曲折を経て、今の寿があるわけです。

だから「俺は寿で、下川の台所を守る店をやってみたい」という意志がないと、難しい。ただ、小売業をやってみたいとか商店の経営者になりたいという気持ちでは、寿の経営はできないと思いますね。なぜかというと、地域で暮らしているひとの生活を知らないと、商売ができないから。メーカーが統計を取ったデータに従って、品数を仕入れて適当に並べればいいなら、寿じゃなくてもできます。

地域の食卓を支えてきた土台があって、寿という店が続いているから、地元のひとや生活を無視して経営はできません。逆に言えば、チェーン店が手が回らないようなお客さんと店との距離感で、仕事ができるということです。

寿フードセンター

人材不足なのは、どの地域でも一緒だとは思うけど、そもそもの問題は人口減少というより僕自身が忙しさを言い訳にして、ひとを育てることを重視できなかったことだと思っています。それは、僕も反省しているところで……。

特に、こういう小売業で今一番求められているのは専門職の人材なんです。魚屋さん、八百屋さん、肉屋さん、総菜屋さん──それぞれの知識が豊富なひと、ちゃんと包丁握って、仕切れるひとが全然いない。みんな経営者をやりたがるんですよね、かっこいいじゃないですか、経営者は。トップだしね。でも、商売をする上で一番の核になるのは、しっかりとした商品知識を持つ人材。そういうひとたちが、全然育っていないんです。

そして、こういう専門知識があるひとがいるっていうところが、地域のスーパーとチェーン店やコンビニとの、大きな違いになるんです。価格競争では勝てない。だったら、商品知識で勝負するしかない。小さなスーパーだからこそ、それをお客さんに届けやすいしね。

今、鮮魚担当者が必要な理由

だから、これからの小売業界では専門性のある人材が引っ張りだこだと思いますよ。うちも、欲しいですもん……特に魚の専門職は必要ですね。経験がなくてもいい。魚が好きだとか、下川町に興味があるっていうひとなら、修行をちゃんとすれば店に立てるようになるから。

寿フードセンター

今の魚屋さんって、お客さんの注文に合わせて頭を切ったり骨を落としたりするでしょう。店で買ったものをそのまま食卓に並べられるように、刺身にして販売するのも今では普通です。そういう加工技術は、やればできるようになる。ただ、1年間で世界の魚がどんなふうに回遊して、おいしい状態で提供できるようになるかを知っていることが大事で。

寿フードセンター

品物を仕入れて、お客さんに一番美味しいものを提供できるようになる知識は、頭で理解しただけではできない。現場での経験値がものをいうわけ。時期によって違いますからね。3年くらいじっくりしっかり、修行すれば店にも立てるようになります。あとは、魚が好きかどうか。好きであれば、やる気だって湧いてくる。今度は、そういう大事な人材を、僕としてもちゃんと育てたいと思っています。

寿フードセンター

寿フードセンター

寿フードセンター

寿フードセンター

寿フードセンター

寿フードセンター

文:立花実咲
写真:伊佐知美

(この記事は、北海道下川町《下川町産業活性化支援機構》と協働で製作する記事広告コンテンツです)

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この会社について

会社名:合資会社寿フードセンター
代表:夏野俊一
設立:1921年
住所:北海道上川郡下川町錦町4番地
電話番号:01655-4-2050
従業員:10名

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探求者

立花実咲

1991年生まれ、静岡県出身の編集者。生もの&手づくりのもの好き。パフォーミングアーツの世界と日常をつなぎたい。北海道下川町で宿「andgram」をはじめました。→ さらに詳しく見る

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