営みを知る

【徳島県神山町】旅をしながら地域で暮らし、社会での役割を持つということ

これまで灯台もと暮らし編集部では徳島県神山町の取材をしてきました。そのきっかけを作り、取材に尽力してくれたのは、オレンジ色の帽子がトレードマークの堤進太郎さん。国内外の地域を旅してきた彼が一定期間の滞在を経て神山町に感じた違和感と、町の本当の魅力について。そして取材を通して得たものを語っていただきました。

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僕が初めて神山町を訪れたのは昨年の4月です。ヒッチハイクの旅の途中に友人を訪ねて来てみたら、よくわからぬまま岩丸百貨店を宿泊先として紹介され、結局居心地がよくて1週間も滞在してしまいました。

岩丸潔

その時に神山町が気に入って、また行ってみたい、できることなら少し住んでみたいと思っていたところ、今度は友人の空間デザイナーが受けた神山での仕事を手伝わせてもらえることになりました。昨年の9月、再び神山町に行きました。今回取材で灯台もと暮らしのメンバーを一緒にアテンドした聖平(西聖平さん)とはそこで初めて会いました。

堤進太郎・西聖平
(左)堤進太郎さん(右)西聖平さん

毎日のように町のどこかでイベントや飲み会があって、僕らも仕事の合間にいろんなところに顔を出していました。神山町での生活は楽しいものでした。

暮らしてみて感じた違和感

ただ、住みはじめてみると、「メディアを通して見聞きしていた神山町の印象とは、なんだか違いがあるな」と感じました。どこか心に引っ掛かるのです。

メディアに取り上げられる神山町は、IT企業の誘致など「神山モデル」という地域活性の成功例としての取り上げられ方が主です。でも、一定期間滞在してわかった違和感の源とは、神山町の魅力が「神山モデル」だけではないこと。

神山町

当然のことなんですけど、神山町にはサテライトオフィスで働くIT関連の仕事をしている人やNPO法人グリーンバレーに関係する人以外にもいろんな人がいるし、いろんな暮らしがあるんです。しかもそれがおもしろい。

移住者の方たちはちゃんと自分で選択をして生きている人が多いし、地元の方でも自分で家作っちゃうとか、暮らしの基本能力の高さにびっくりします。地域の行事なども多くて、とても文化的なところだなとも感じました。

神山町の外からメディアの情報だけを見ていると、光の当たっている一部分しか見えないんじゃないかなと。住んでいる人の中にも、そのあたりの違和感を感じている人がいました。

そんな時に、鳥井くんが新しいメディアを作ることを聞き、一緒に取材をしてみたら面白いんじゃないかとなりました。短期間のスケジュールで取材や視察にやってくる人たちが、数日でその土地の人や暮らしをしっかり見ることはとても難しいです。その点、僕らは実際に1ヶ月半そこで生活していた。たった1ヶ月半なので、きっと見れたのは神山のほんの一部です。それでも僕らが間に入ることで、一般的な取材よりは取材対象者に丁寧によりそった取材ができるんじゃないかと思いましたし、それが僕らの役割なのかなと思いました。

初めてのことだらけで、至らぬところもいっぱいありましたし、迷惑もかけていると思います。それでも取材を受けてくださったみなさんと、一緒に取り組んでくれたもとくらのメンバーには本当に感謝しています。

旅をしながら社会の役割を持つということ

僕らの役割。これは、僕が去年1年間、日本国内のいろんなところを訪れるうちに意識するようになったことです。

旅をしている中で、町の中に多様な人が存在していてもその土地に住んでいる人だけしかいないと、付き合いが固定化しがちな状況になりやすいのではないか思うようになりました。地域でせっかくおもしろい状況が生まれているのに、それを活かしきれていないような。

つながりが固定化した地域に、外部からの出入りがあった方がおもしろくなると思っています。たとえば地元にUターンしてきた人や、僕らのように色んな土地に顔を出すような人が地域を繋げたりかき回すことによって、新しいアイデアや楽しいことが生まれやすくなるんじゃないかなと。これは難しい話ではなく、単純に飲み会を開いていろんな人を繋げるということでもいい。

堤進太郎
(写真提供:Medicala / アズノタダフミ)

神山のあとに滞在した、大分県竹田市のお施主さん(大分では、イタリアンレストランを作る現場を手伝っていました。)は東京からUターンしてきた人なんですけど、まさにそうやって町を活性化している人でした。とにかくいろんな人を繋いでいて、ここはなにかが生まれていきそうだなという印象を与えてくれる人でした。

そもそも僕は、旅をすることが良い経験になるとは思っていたけれど、旅の最中に社会と関わるような役割を持つということは意識していませんでした。

でもいろんな土地を訪れているうちに、僕のような存在をおもしろがってくれる人がいたり、ほかの土地のことを聞いてくれたりする人が思っていたより結構多くて、だんだん僕の立場での役割についても意識するようになりました。

多様だから、きっともっとおもしろくなる

今回の神山特集は、だれか1人ではなくて取材を受けてくれた方全員を見てもらいたいです。

神山には多様な人たちがいます。その多様さがおもしろくて、色々問題もあると思うけど、きっともっとおもしろくなる。それが伝われば嬉しいですし、読んでくれた人がなにかを考えるきっかけになったらいいなと思っています。

(ライター:堤進太郎)

(写真提供:Yikin HYO / 馮 意欣
(写真提供:Medicala / アズノタダフミ

お話を伺った人

堤 進太郎(つつみ しんたろう)
Facebook/Twitter @shintarooooo

1987年東京都生まれ。中央大学経済学部卒。
3年間のサラリーマン生活の後、2013年から様々な文化を見るために国内外を旅する。興味を持った土地や人を訪ねて一緒に手を動かす、WWOOF的な旅を好む。現在は旅を続けながらも、地方での定住を検討中。

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小松﨑拓郎

ドイツ・ベルリン在住の編集者 / フォトグラファー。茨城県龍ケ崎市出身、→ さらに詳しく見る

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