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【西荻窪】雑貨食堂「六貨」店主が語る。愛すべきヘソ曲がりの西荻上手な住人でありたい

帰りたくなる町に暮らそう。【西荻窪】特集はじめます。

狭い店内をぐるりと見回すと、使ってみたくなる日用雑貨があちこちに。ここは、「雑貨食堂 六貨」。店主の竹内由紀さんに、お店のこと、西荻窪(以下、愛情を込めて西荻)のことを聞きました。彼女が「地域を利用するのが上手な住人でありたい」と話すのは、なぜなのでしょうか。

心地よく暮らす6つの要素

雑貨食堂・六貨

── 六貨さんのコンセプト、おもしろいなと思いました。

竹内由紀(以下、竹内) 百貨店から着想を得た名前なんですよ。「雑貨食堂 六貨」は、衣食住に加えて、そのひとが心地良く生きるために必要な要素をもう3つを足せば、そのひとらしい暮らしが成立するのではという意味を込めて「六貨」と名付けました。百貨店のように「100」個もものがあると、多すぎてどれを選んだらいいのかわからなくなってしまう。六貨に足を運べば、衣食住はもちろん暮らしを彩る要素が、充分に揃えばいいなあと。

── 竹内さんの心地よい暮らしには、「読」「創」「贈」の3つの要素があるんですね。

竹内 西荻は、吉祥寺と荻窪の間に挟まれていて、どちらかへ行けば大抵のものが手に入り、衣食住には困りません。けれど、そこでもなかなか見つからないような「あったらいいな」と思うものと自分の好きなものを重ね合わせたら、その3つの要素になりました。だから六貨では、町の「読」「創」「贈」を補ってくれて、私がおすすめしたい商品を集めています。

西荻って、じつはおもしろい不自由さがあるんです(笑)。本を探すなら新書の書店や古本屋に行けば品揃えは充実しているんだけど、調理器具のおたまが欲しくなったら、百均かSEIYUしかない。個性のあるアンバランスな町なので、その不自由さを楽しんでいる方々はたくさんいると思います。

六貨・竹内由紀さん

雑貨食堂・六貨

── 2011年に「雑貨食堂 六貨」を開業してから、どんなお客さまが来ますか?

竹内 私に似たひとが来てくれます。つまり自分の台所を持っている、30代の主婦の方が多いです。

── 男性って、いらっしゃいますか?

竹内 意外と多いんですよ。

1人でもふらーっと入って来てくださるので、すごくありがたいです。

外観が雑貨屋さんのようだと、男性はお店に入りづらいかなと思います。六貨はあくまで道具屋ですから、「どうぞ必要なものがあれば入ってきてください」という気持ちなんです。だからいらっしゃるお客さまを見ていると、今のところ老若男女を問わないので、気軽に入れるお店になっているようで少し安心します(笑)。

お店屋さんごっこは楽しい

六貨・竹内由紀さん

── 竹内さんが「雑貨食堂 六貨」を始める原点は、どこにあると思いますか?

竹内 前職で雑貨メーカーに勤めていた経験もあると思いますが、お店をやる素養は、社会人に成り立ての頃に身に付いたと思います。

── それはどんなことですか?

竹内 大人の文化祭みたいなデザフェス(*1)に、初期から、興味津々なお客さまとして参加していました。でも売る側に回った方がもっとおもしろそうだと思って、友達とブースを半分ずつにして出店することにしました。何かをつくりたいという思いよりは、出店者として売る側に回りたいがゆえに、商品をつくっていたんです(笑)。

(*1)デザフェス:デザインフェスタのこと。1994年からスタートした、プロ・アマチュア問わず「自由に表現出来る場」を提供するアートイベント。会場では、年齢や国籍・ジャンル・スタイルを問わず、10,000人以上のアーティストのありとあらゆる表現に出会える。

── 何をつくったのか気になります(笑)。

竹内 デザフェスにはポストカードを売っているひとはごまんといるし、洋服を縫い上げるひとまでいる。私は何をつくればお店として出店できるのか考えたときに、容器に手書きで絵を描いて、1点ものの商品をつくることにしました。出店費を差し引いたら採算なんて取れていないけど、お店屋さんをする喜びは存分に味わいましたね。

── 六貨をオープンする前まで、継続的にデザフェスで商品を販売されていたんですか?

竹内 約8年間、「お店屋さんごっこは楽しい」とずーっと確認し続けまして。前職で勤めていた雑貨のメーカーから転職しようと考えたときに、お店を開いてみる選択肢を思いつきました。で、お店屋さんになっちゃったんですよね(笑)。無謀ですけど、誰に反対されるわけでもなかったんです。いつのまにか、開業する準備ができていたのかもしれません。

西荻の住人は、ちょっとへそ曲がり

雑貨食堂・六貨

── 西荻でお店を開いたのはなぜですか?

竹内 もともとは夫の職場だった市ヶ谷に出やすい所で、引越し先の家を探していたんです。はじめは土地勘があった京王線沿いを見てみたけれど、住まいとしてピンとくるところに出会えず。路線を変えて、なんとなく西荻の物件を見せてもらったら、すごく楽しく住めそうな気配がしたんです。そのときは自分が西荻に店を開くとは思ってもいませんでした。ただの会社員が通勤しやすいところで家を探したら西荻になった、というだけで偶然なんです。

── 実際に住んでみて、西荻に魅力を感じますか?

竹内 西荻の魅力は、ちょっぴりコンプレックスがあるところだと思います。

雑貨食堂・六貨

── それはどういうことですか?

竹内 西荻は吉祥寺と荻窪というターミナル駅に挟まれている、いわば谷間です。でも、ここに暮らしている方も、お仕事をしている方たちも、「じゃあ、ここでやったるわ」と言わんばかりの気概を持っています。少し、へそ曲がりなのかもしれません(笑)。

吉祥寺では実現できなさそうな企画を立てたりするんですが、逆張りをしているわけではないの。谷間であることを逆手にとって楽しんでいる、と言ったらいいのかなあ。西荻に住むのを楽しめるひとたちが集まっているのが、おもしろいことだと思いますね。

子どもが育つ環境で働くお母さんでいたい

雑貨食堂・六貨

雑貨食堂・六貨

── 今後は「雑貨食堂 六貨」をどんなお店にしていきたいですか?

竹内 原点に立ち戻って、これからも西荻で、長くお店を続けていきたいです。

── なるほど。

竹内 この春に子どもが産まれました。そうしたら10年、20年という単位で未来を考えるようになったんです。西荻の小・中学校に子どもが通って成長していくことを想像すると、子どもが育つ環境と同じ地域で働いているお母さんでいたい。子どもの目の届くところで働いているお母さんであるほうが、子どもにも、お店にも、そして自分にとっても楽しいだろうとイメージできるから。

そのためには六貨を続けていくことが前提になります。お店を増やすことよりも、一ヶ所で長く継続することのほうにチャレンジしたいですね。

── 家族で長く西荻で生活することを考えているんですね。

竹内 そうなんです。西荻を利用するのが上手な住人でありたいですね。食べたいもの、着たい洋服を探すにしろ、歩いて行ける西荻で気に入ったものが手に入れば、すごく幸せなこと。知り合いの店に依存することではなくて、足元にある素敵なものを見過ごしたくないのかな。だから本当に自分が欲しいものを西荻で見つけられるように、アンテナを張っていきたいです。

── 地域内でいい循環が生まれそうです。

竹内 西荻で使ったお金は地域に貯金されて、そのお金が自分に返ってきている気がします。5周年になるお店さんが、記念に店名とロゴをグラスに描いてくれない?って頼んでくれたりする。わたしができる仕事に変換されて、贈ってもらえる場所です。

やっぱり、地域の利用上手でありたいと思いますね。

六貨・竹内由紀さん

お話をうかがったひと

竹内 由紀(たけうち ゆき)
販促企画、雑貨の企画などの職を経て2011年より「雑貨食堂 六貨」店主。西荻の住人として地域の「役に立つ」店であることを大切にしつつ日々右往左往しながら営業中。

このお店のこと

雑貨食堂 六貨(ろっか)
住所:東京都杉並区松庵3-1-11
営業時間:13:00〜18:30、土曜日13:00〜19:00
定休日:水曜日、不定休
電話:090-8491-7618
公式サイトはこちら

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小松﨑拓郎

ドイツ・ベルリン在住の編集者 / フォトグラファー。茨城県龍ケ崎市出身、→ さらに詳しく見る

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西荻窪の本屋さん「青と夜ノ空」で、五感で味わう本の世界を。

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