郷に入る

【西荻窪・毎日】駅南へ散歩 ―旅立つ人を見送る、熟成カレーみたいな町―

帰りたくなる町に暮らそう。【西荻窪】特集はじめます。

西荻には何かが棲むと、誰かが言いました。その「何か」を感じさせるほど、一度出て戻ってくる人、わざわざ西荻を目指して鈍行を乗り継ぎやって来る人が一定数います。

昔から住んでいる人、新しく引っ越してきた人が混在することで、じわじわと作られてきた「西荻らしさ」。それを感じるには、西荻窪駅南がぴったりです。

西荻のシンボル「ピンクの象」

西荻窪駅南口を出ると、雑居ビルがいくつか並んでいるのが目に入ります。このあたりは駅の目の前ということもあり、お店の入れ替わりも激しいのです。

西荻窪駅南口

駅南には、アーケードのある仲道街が通っています。

仲道街

そしてここには、西荻のシンボルと言っても過言ではない、「アレ」が吊るされています。

西荻窪のピンクの像

一見ハリボテですが、町の人たちから愛されるピンク色の象が、天井にゆうゆうと浮かんでいるではありませんか。毎年一度だけ地上に降ろされれ、山車として町の人と祭りに繰り出します。

手作りですので、お祭りの日の天気によっては使用できないこともあるそうです。

西荻窪の随所に見られるスキマ

また、駅南を歩くと、お店とお店の間に20センチほどの隙間が多いことがわかります。これは、新しく家やお店ができる前に道が通っていた名残だそうです。昔はすぐ左右に曲がって通り抜けられたところに、今は板や看板、柱などが建てられ塞がっています。

ですが一度気づくと本当にいろいろなところに、こうした隙間を見つけることができます。

東西を結ぶ商店街をぐるりと

北口同様、南口にも小さく分けられた商店街が、四方へ通っています。

喫茶店を通り過ぎると公園、公園があるかと思えば住宅地、住宅地に紛れて雑貨屋さん、といった具合に個人店が並びます。

西荻窪駅南の平和通

西荻窪の八百屋さん

西荻窪駅南の平和通

西荻駅南のようす

レトロな看板がいっぱい

リノベーションは夏水組へ

老舗の喫茶店「それいゆ」

東銀座会

西荻デパート

西荻という町の雰囲気を、あうんの呼吸で全員で把握し、演出しているような町並みが魅力の駅南。古くから続いているお店も多く、一見「古っ!」と感じるところでも、ほぼ毎日変わらない賑わいを見せているのが特徴です。

時の重なりによって古臭くなるかと思えば、そういうわけでもなく、かと言って最先端でもない肩の力の抜けた雰囲気が「古き良き西荻」を作り上げているように感じます。

南へ一直線に伸びる通称・乙女ロード

西荻窪駅を、さらに南へ行くと五日市街道という大通りに突き当たります。そこまでの道のひとつに、通称乙女ロードと呼ばれる商店街があります。

乙女ロード

ものづくりをしている人たちが出店したところが多く、仕立て屋さんや靴屋さん、スパイス専門店や台所用品専門や、アンティーク雑貨を扱うお店などが並びます。

乙女ロードという通称になったのは、こうした専門店がものづくりや手作りが好きな女の子にはたまらないスポットになっているからだと言われています。

西荻窪の乙女ロード

スパイス専門店

喫茶店たち

阿部たばこ店

乙女ロード終盤のようす

ちなみに、南口には古いアパートや古民家も密集しています。住んでいる人をただやさしく迎え入れてくれるという場所は、下積み時代を過ごす修行の場のような雰囲気が、ほんのり感じられました。

恵荘

松庵三丁目

町が移り変わってきた名残が、新しかったり古かったりする建物が並ぶ南口は、どこか熟成されたカレーのように、時間をかければかけるほど味の出る町のように思います。

この町に、しっかりやれよ、と背中を押されて旅立って行った人は今まで数え切れないほどいるでしょう。そしていつか、少しおとなびた哀愁なんかを漂わせて、また西荻に帰ってくるのを、しずかに待っているのではないでしょうか。

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立花実咲

1991年生まれ、静岡県出身の編集者。生もの&手づくりのもの好き。パフォーミングアーツの世界と日常をつなぎたい。北海道下川町で宿「andgram」をはじめました。→ さらに詳しく見る

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