郷に入る

【西荻窪・夕方】住人の胃袋を支える八百屋「小高商店」で美味しい旬の食材を

帰りたくなる町に暮らそう。【西荻窪】特集はじめます。

お昼前の11時ごろ、そして夕方、小学生が下校する夕暮れ時。西荻窪駅北口を出て、細い道をまっすぐ行くとすぐ右手にある、小高商店には、いつも多くの主婦や一人暮らしと思われる女子大生や男性、子供を迎えに来たママやパパでにぎわっています。

小高商店

そしてその中心には、小高商店のご主人。恰幅のいい響く声で「さあさあ好きなの買ってって!」と途切れずに掛け声をあげています。

地域に住む人々の胃袋をがっつりつかんだ「小高商店」。もし今日の夕食に困ったら、台所事情を相談しに行ってみましょう。

西荻の台所「小高商店」

小高商店は、ご主人だけではなくお客さんも積極的にお店の方に話しかけます。

「今日、おいしいトマトはある?」

「この野菜どうやって食べたらおいしいかな?」

「食後に食べるくだもの欲しいんだけど、どれがおすすめ?」

すべての質問に、ご主人をはじめ小高商店の方は、適格に答えます。それは「無駄なものは買わせない。お客さんのほんとうに食べたいと思うものを見極める」と言うご主人の長年の視座があるようです。

小高商店

「お店を構えてから45年になるけど、世代交代を経て西荻もずいぶん変わりました。でも、悪くなったというわけではなくて、ある一定のおだやかな雰囲気みたいなものは、ずっと変わらないね。ここに来るお客さんも、お店のことを信頼してくれているし、僕たちもお客さんを信頼している。その関係も、おかげさまでずっと途切れず続いています。」

今は品種改良も活発に行われるおかげで、野菜や果物の種類が多く、どういう味や匂いなのか知らないお客さんも多いと言います。そういう人には、店頭で実際に生で食べてもらうこともあるそうです。

「実際に体験して、おいしいかどうかはお客さんに判断してもらわないと。お客さんが一番いいと思うものを買っていってほしいですから。僕らは、満足感をきちんと届ける責任があります。」

小高商店

小高商店に来るお客さんは、みんな食べることを愛しているように感じるとご主人はいいます。今おいしいもの、旬のものを届ければ、お客さんは自然と集まってくる。だから、スーパーや同業者の存在はいくら増えようと、全く気にしません。それは小高商店が仕入れにプライドとこだわりを持ち、その熱意が商品や活気のある店頭の様子からお客さんに確実に伝わっているからでしょう。

食べることは相手のことを考えること

一見、家族で営業しているのかと思いきや、実はみんな働きに来ている方々。でも、「そういう雰囲気のほうが、お客さんも入りやすいでしょ」とご主人はいいます。

「西荻は、住む町だね。荻窪と吉祥寺に挟まれているから、モノで困ることはないし、人に関してはあったかい人が多い。いつもどこかで誰かがめんどうをみてくれる。やさしい人が多いよね。それに、こっちが言うことをちゃあんと聞いてくれる人ばかり。」

小高商店

「だから僕らも、お客さんの献立とか仕入れの状況を見てアドバイスしやすいし、ちゃんとキャッチボールができる。お客さんの中には、神様みたいに振る舞う人もいると思うけど、そういう態度をとる人は、西荻にはいないなあ。」

穏やかで暮らすのに最適な町で、小高商店は住人たちにとってどういう場所になっているかと問えば「ウチは西荻の人たちの胃袋をがっつりつかんでいるよ」とご主人は笑いました。

食べることって、食べさせるという時もそうだけど、一旦相手の立場に立って考える必要がある行為でしょ。生産者、売り手、作ってくれた人のことを思って、食べる。だから僕らは、お客さんに最高のものを届けるためにどうすればいいか、ちゃんと考え続けることが大事です。」

小高商店

「西荻はそういう意味でも暮らしやすいかな、食べることをきちんと考える人が多いような気がするから。人がいいから、寝るとき鍵をかけなくてもいいんじゃないかってくらい治安がいいよ(笑)。今は毎日、お店に立ってお客さんたちと話しているのが何より楽しいです。」

困ったときはプロに聞け、と分かってはいるけれど、普段の生活のなかで、町の人に頼るということはあまりありません。けれど、スーパーに並んでいるものと同じ種類の野菜や果物でも、小高商店に並んでいるのを見ると、きらきらつやつやして見えてくるから不思議です。

きっとこれは品物本来の品質と、小高商店全体から漲る、お客さんへの敬意の表れかもしれません。

小高商店

今日の夕ご飯、何にしよう?と迷ったら、まずは小高商店へ行ってみましょう。ご主人が、きっと今一番おいしいものを、おいしく食べれる方法と一緒に教えてくれるはずです。

お店の情報

小高商店
住所:東京都杉並区西荻北3-20-7 1F
電話番号:03-3399-8243
営業時間:9:00~20:00
定休日:日曜日

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立花実咲

1991年生まれ、静岡県出身の編集者。生もの&手づくりのもの好き。パフォーミングアーツの世界と日常をつなぎたい。北海道下川町で宿「andgram」をはじめました。→ さらに詳しく見る

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