郷に入る

【西荻窪・日常】まずは「西荻案内所」に行ってみよう

帰りたくなる町に暮らそう。【西荻窪】特集はじめます。

西荻に来たはいいけれど、右も左も分からない。

思うがままに歩いていくのも楽しいけれど、まずは町のことをよく知る人のところへ行ってみよう。

掲げられた看板に書いてある「西荻案内所」。駅から徒歩2分ですが、初めて来た人はなかなかたどり着けないかもしれない、目立たない立地。住宅街の中にひょっこり現れる、ちょっと変わった町の案内所です。

住人も西荻に初めて来た人も集う空間

西荻案内所は、2013年3月にオープンしました。こじんまりとした室内には、畳の貼られた椅子が置かれ、杉並区の歴史に関する本や西荻が舞台になった小説、西荻のシンボルのピンクの象(*1)をモチーフにした雑貨などが並んでいます。

(*1)ピンクの象:西荻窪駅の南口にある仲通商店街のアーケードから吊るされている手作りのピンク色の象の像

西荻案内所

西荻案内所は、西荻夕市というイベントを一緒に企画・運営していた奥秋夫妻と、チャンキー松本・いぬんこ夫妻、駅前の日本茶専門店を営む「茶舗あすか」さんを中心メンバーとして始まりました。

現在は、様々な人が出入りをする憩いの場となっています。

奥秋夫妻
奥秋圭さん、奥秋亜矢さん

「西荻に遊びに来た人が、散策の手がかりをもらいにここへ来ます。予定調和ではなく、偶然の発見も楽しみながら町を知ってもらえればと心がけています。こんな立地ですから、案内所に来るためにわざわざ交番で場所を聞く人もいますが、そういうのも西荻らしいかなと思います。

また、もともと西荻に住んでいる人も仕事の休憩中などにふらっとここに立ち寄ることもありますよ。」

町の中には遊ぶ場所や、ゆっくりできるところはたくさんありますが、それらを利用するにはお金が必要で、ただ立ち寄って少しの間休める場所というのはなかなかありません。

西荻案内所は、ただガイドをするだけではなく、西荻ビギナーがちょっと落ち着いて西荻のことをより深く知る手がかりを得たり、長く住んでいる方が憩いながら「作戦会議」をする場になっているようです。

西荻案内所

「遊びに来た人は、どこへ行こうかわくわくしながら、いろいろなことを私たちに聞いてきます。一方で、西荻で何かやりたいなとモヤモヤした思いを抱えてくる人もいます。そういう人達の手助けをするときや、自分たちも一緒に企画を作るとき場があった方が話が早くて動きやすいんです。

情報をまとめて発信するだけならウェブサイトをつくればいいけれど、ウェブの情報は特定の層にしか届きません。場所があることで老若男女が集って知り合えるようになります。西荻に愛着のある人たちの、拠点になったらうれしいなと思いますね。」

西荻を好きになってもらうきっかけ作り

奥秋さんご夫婦も、もともとは別のところで暮らしていましたが、8年前に西荻に居を構えました。西荻を選んだ理由は「ともだちができそうな町だったから」。さらに、住んでいる人たちの顔が見え、緑が多い町ということも魅力的でした。

西荻まち歩きマップ

すっかり惚れ込んだ西荻で、奥秋さんたちは様々な試みを行っています。

例えば、住人も遊びに来た人も一度は目にするであろう「西荻まち歩きマップ」。これは2008年を最後に発行がストップしていましたが、西荻案内所が設立されるのとほぼ同時に奥秋さんたちが地図作りを引き継ぎ、以前のものよりサイズを大きくしたり、カラー印刷に変えるなどの進化を経て、新たな西荻マップが完成しました。

地図作りのために実際に自分たちの足で歩いて回ると、どれだけこの町が動いているのか分かります。のんびりした雰囲気ではありますが、意外とその変化は激しいものです。

掲載している歴史のことなども、もう一度自分たちで調べなおして年々ブラッシュアップしています。中には、よく読んでくださっている方から指摘をいただくこともあります。そうした指摘や助言を反映させながら、これからも新しいものを毎年発行していく予定です。」

また、西荻案内所が発信するものでもうひとつ、見逃せないものがあります。それが「西荻観光手帖」(発行:西荻窪商店会連合会)。自分たちが暮らす町を、もっと知って好きになってもらいたいと思ってつくった「西荻観光手帖」は、ページを自分で追加したり入れ替えることもでき、西荻の今昔や自然などをたっぷり味わうことができます。

西荻案内所

この冊子の作成には、長年地元に住んでいる方の協力は不可欠だったと言います。というのも「西荻観光手帖」に掲載されている西荻の昔の写真などは、お借りして集めたものなのです。

「町を多面的に紹介するためには、ずっと住んでいる方と最近西荻に引っ越してきた方のどちらの協力も必要です。キャッチーな魅力は、新しい住人の方が作り上げた部分もありますが、その土台には歴史的な経緯が必ずあります。

時には、こうした立場の違いから、お互いの理解がうまくいかないこともありますが、この『西荻観光手帖』や西荻案内所がそのなかだちになって、みんなが仲良く西荻のいいところを共有できたらいいなって思います。」

西荻なら、もしかしたらできるかも

個人の結びつきが強く残りつつ、排他的ではないバランスのとれた町。西荻まち歩きマップの他に、西荻夕市や手しごと市など、西荻案内所が関わっている企画はたくさんあります。

西荻には、こうした新しい試みや活動に挑戦させてくれる雰囲気がある、と奥秋さんはいいます。

「以前、『西荻のカレー屋さんがすごいから何かイベントを企画したい!』と言う人が来たことがありました。そういう人の一言で夕市でカレーをテーマにすることが決まったんです。

この町は、新しいことをやろうとする人に対して比較的寛容ですし、熱を持った人がたくさんいる。『ていねいに、』というお店を経営している福田さんの結婚式を、町をあげてお祝いした「西荻婚」という結婚式をプロデュースしたこともありました。

西荻出身の福田さんのために、西荻に住むたくさんの人が一肌脱ごう、と言ってくださって一致団結しました。何かに挑戦したいという気持ちを伝えたら誰かが助けてくれるかもしれないし、相談できる人たちも近くにいる。人肌のぬくもりがする、コンパクトな町です。

思い立ったらすぐ聞きに行く人もいて、その前に電話一本入れればいいのに、と思うこともありますが(笑)、一見非効率に見えることも西荻だからこそ回るサイクルやコミュニケーションがあるのだと思います。」

身の回りの生活をこなすことに追われていると、周りの風景や自分の住む地域の味わいを忘れてしまうことがあります。ですが、自分たちが暮らす町だからこそ、もっとその町を好きになれる。西荻案内所は、そんなことを思い出させてくれる場所です。

西荻案内所

この場所の情報

西荻案内所
住所:東京都杉並区西荻北3丁目18-10
電話番号:03-6454-7663
営業時間:13:00~18:00
定休日:木曜日
公式サイト:西荻案内所

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立花実咲

1991年生まれ、静岡県出身の編集者。生もの&手づくりのもの好き。パフォーミングアーツの世界と日常をつなぎたい。北海道下川町で宿「andgram」をはじめました。→ さらに詳しく見る

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